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2016-03-18

ソース（記事原文）：News-Medical

パラセタモールは変形性関節症患者における
臨床効果の最低水準に達せず

【News-Medical】（2016年3月18日）

変形性関節症に対する鎮痛薬の大規模解析において、膝と股関節に変形性関節症を持つ患者の疼痛緩和や身体機能の改善に、パラセタモールが臨床効果の最低水準に達していないことを研究者たちが発見した。パラセタモールはプラセボ群よりもわずかによかったものの、パラセタモールのみの服用では、服用量に関係なく変形性関節症を持つ患者の治療には何の役にも立たない、と研究者たちはまとめている。

ランセット誌で発表されたこの研究は、今までに行なわれた変形関節症に対する鎮痛薬の無作為化試験の最大の分析であり、非ステロイド抗炎症薬（NSAID）であるジクロフェナクを1日に150mg使用することは、短期間の疼痛緩和に対していちばん効果的であることがわかった。しかしながら既知の副作用のため、著者たちはNSAIDの長期使用については警告している。

世界的に見て、60歳以上の人のうち男性の9.6％および女性の18％が変形性関節症を患っている。推定では、アメリカでは2千690万人の成人が、そしてイギリスでは875万人がこの疾病を持っていると示唆されている。変形性関節症は高齢者の痛みの主な原因である。身体活動を損なうことがあるため、患者の糖尿病、心臓血管疾患、肥満、そして一般的な健康障害のリスクを上昇させている。

スイスのベルン州にあるベルン大学に籍を置くスフェン・トレル（Sven Trelle）博士とその同僚は、1980年から2015年の間に発表された74の無作為化試験のデータを利用した。変形性関節症を患う合計58556の患者データを用いて、この研究（ネットワーク・メタ分析）では疼痛強度と身体活動に対する22の異なる投薬治療とプラセボを比較した。この22の治療には、多種の用量のパラセタモールと7種類のNSAIDが含まれている。

パラセタモールとNSAIDは、通常は変形性関節症における軽度から中等度の疼痛処置ための一次治療であるが、NSAIDの長期使用は心臓血管および胃腸関係の副作用を起こすため、長期治療にはパラセタモールがより頻繁に使用される。

この分析において、用量に関係なく22すべての調剤がプラセボ群と比較して痛みの症状を改善したことを発見した。パラセタモールは用量に応じて身体機能の改善および疼痛の低減にわずかな効果を示したが、効果はプラセボよりもわずかによかった程度であり、最低限の重要な臨床的相違には至っていない。比較すると、1日の最大用量である150mg/日のジクロフェナクは変形性関節症における疼痛と身体障害に対してもっとも効果的であり、最大用量のイブプロフェンやナプロキセン、セレコキシブなどのNSAIDを頻繁に使用するよりも優れている。

トレル博士はこう語っている。

通常 NSAID は変形関節症における短期の疼痛症状の治療に使用されます。なぜなら長期的に使用した場合、その副作用は利益よりも比重が重くなると考えられているからです。この理由により、パラセタモールは NSAID の代わりに長期疼痛の治療によく処方されます。しかし、いかなる量のパラセタモールも変形性関節症の疼痛を治療する効果はありませんが、特定量の NSAID は効果的であり、パラセタモールなしでも断続的に使用できることを、私たちの研究結果は示唆しているのです。

NSAID は変形性関節症を持つ患者にもっとも広く使用される薬のひとつです。異なる服用量のさまざまな薬を医者は処方できますが、最初に処方された薬が患者の痛みを充分にコントロールできなかった場合は、患者は頻繁に薬の種類を変更したり、使用をやめることになります。このような人たちの痛みをどう治療すればいちばんいいのかを、私たちの研究がうまく医者たちに伝えることができる助けになれば、と望んでいます。

これらの臨床試験データのほとんどの臨床追跡期間は3ヵ月またはそれ未満であり、もっと長い期間追跡したほかの研究が必要かもしれない、と著者たちは認識している。この分析に含まれている全体的な患者数は多いが、個人の用量を評価した臨床数は依然として低い。

フランスのボルドーにあるボルドー大学薬学部のニコラス・ムーア教授とその同僚は、研究の制約について関連コメントで以下のように指摘している。

「広く使用されているほかの NSAID はこのメタ分析には含まれていません。おそらくこれらの薬剤に関する試験が最近行なわれていない、もしくはこれらの薬剤を評価した最近の研究の規模が小さすぎるためだと思われます。これらの薬剤は効果的と思われる割に最新の薬剤より値段がかなり安いだけに、データの脱落は残念です。もっとも注目すべき結果は、パラセタモールはいかなる用量においても、変形性関節症に対して実証できる効果や利益がみられないということです。この結果はまったく予期しなかったことです。パラセタモールは私たちのほとんど全員が覚えているほど長く市場に出ています。その効き目はきちんと発表されたこともなければ、慢性病において数値化されたこともありません。またおそらくほかの多くの人が信じているほど偉大な薬ではないかもしれません。過剰服用だけでなく、その安全性もまた疑問視されています」、と彼は締めくくっている。

またさらに以下のように付け加えている：

NSAID のリスクとパラセタモールの恩恵（事実とはいえないかもしれないが）のために、多くの患者が不必要に処方されている可能性があります。おそらく研究員たちはこれらの認知（または誤解）や、ジピロンなど時代の流れと共に使われなくなったほかの鎮痛剤使用の選択の両方を再評価する必要があるかもしれません。