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2011-11-10

ソース(記事原文):癌ネットワーク

慢性骨髄性白血病(CML)

癌ネットワーク(2011年11月10日)― 執筆者:アンダーソンがんセンター白血病部門ジョージ・コルテス(Jorge E.Cortes)博士、コーネル大医学大学医学部リチャード・シルバー(Richard T. Silver)博士、アンダーソンがんセンター白血病部門ハゴップ・カンタージャン(Hagop Kantarjian)博士

慢性骨髄性白血病(CML)は、未分化造血幹細胞の悪性形質転換(がん化)から生じるクローン性の骨髄増殖性疾患である。CMLはモノクローナル(単一細胞クローン由来のタンパク)が原因となり、骨髄、単球、赤血球、巨核球、B細胞のほか、時にT細胞系列にも影響を及ぼす。ただし、骨髄間質細胞には影響しない。

慢性骨髄性白血病(CML)は、白血病の全成人患者の15%を占める。2011年には約5,150例が新たにCMLと診断され、推定270人が死亡すると予想される[補足:執筆時2011年11月]。罹患率は、人口10万人あたり1.1人である。イマチニブ(グリベック)による治療で、年間死亡率が有意に低下している(死亡率は年2%~3%未満で、治療開始から2~3年過ぎると更に低くなる)。

 

疫学

 

性別

男女比は、1.1:1~1.4:1である。

 

年齢

SEER(監視疫学遠隔成績)とMRC(医学研究評議会)のデータによれば、慢性骨髄性白血病(CML)患者の年齢中央値は66歳である。しかし、薬物療法試験への参加が認められた患者のほとんどは50歳~60歳で (年齢中央値:約53歳)、骨髄移植(BMT)試験の対象となる患者はさらに若年である(年齢中央値:約40歳)。年齢差のバラツキが結果に影響することがあるため、全ての試験で年齢差を考慮しなければならない。

病因とリスク因子

慢性骨髄性白血病(CML)の病因は明らかでない。遺伝的要因や環境要因との関連が報告されているが、ほとんどの場合、原因因子は特定できない。

 

遺伝的要因

慢性骨髄性白血病(CML)を遺伝的要因と関連づける証拠はほとんどない。CML患者の子孫におけるCML発症率は、一般集団以下である。

 

環境要因

放射線治療などの原子核や放射線への暴露は、慢性骨髄性白血病(CML)の発症と関連している。一方、化学薬品への暴露は、リスク増加との一貫した関連性がみられない。

徴候と症状

慢性骨髄性白血病(CML)には通常2つまたは3つの病期があり、初発の慢性期と、末期の急性転化期(芽球期)からなっており、患者の60%~80%は移行期を経てから急性転化期へ進む。

 

慢性期

未治療の場合や、薬剤で治療しても骨髄中フィラデルフィア染色体細胞に有意な影響を与えない場合は、慢性期CML(慢性骨髄性白血病)の生存期間中央値は4年~5.0年とみられる。慢性期ではCML全症例の25%~60%が無症候性であるため、定期的な血液検査によってCMLが発見される。

一方、症状を有する患者の30%~70%に認められる主な徴候と症状には、疲労、左上腹部の疼痛または腫瘤、体重減少、触知可能な脾腫大がある。肝臓の腫大は全症例の10%~20%にみられる。白血球(白血球)数が極めて多い患者では、血液過粘稠の所見が認められることが時折あり、具体的には持続勃起症、耳鳴、昏迷のほか、網膜出血や脳血管発作に起因する視覚変化などがある。

慢性期CML患者では感染症リスクは高くない。

 

移行期(慢性期と急性転化期の中間)

移行期の境界は不明瞭である。インターフェロンとチロシンキナーゼ阻害薬の全試験で使用された移行期の基準は以下の4つの要因のうち1つが存在することである。:治療や細胞遺伝学的なクローン進化を問わず、1)芽球が15%を上回る、2)芽球+前骨髄球が30%を上回る、3)好塩基球が20%を上回る、4)血小板が100×109/L未満であること。これ以外の鑑別法は、主観的基準によるもので臨床的有効性は認められていない。利用した鑑別法が、移行期の確定診断を受けた患者群における予想転帰に影響を及ぼすこともある。イマチニブ治療では、推定で4年生存率が50%を超える。移行期には症状が認められることが多く、具体的には発熱、寝汗、体重減少、進行性脾腫大などである。

 

急性転化期(芽球期)

急性転化期は、形態学的に急性白血病に似ている。この診断には骨髄中または末梢血中に芽球が30%以上存在していることが必要となる。世界保健機関(WHO)は芽球20%以上の場合に急性転化期と診断することを提唱しているが、この鑑別法は妥当性が検証されていないほか、芽球30%以上の患者よりも、芽球20%~29%の患者で予後が有意に良好であることが最近の報告で示された。一部の患者では、急性転化期の特徴に白血病細胞の骨髄外腫瘤があり、これが高頻度に発現する部位は中枢神経系(CNS)、リンパ節、皮膚、または骨である。

急性転化期の患者は一般に3~6ヵ月以内に死亡する。急性転化期の患者の約70%は骨髄性白血病、25%がリンパ性白血病、5%が未分化型白血病である。予後は、リンパ性白血病の方が、骨髄性や未分化型よりも、わずかに良好である(生存期間中央値:9ヵ月対3ヵ月)。

急性転化期の患者は、体重減少、発熱、寝汗、骨痛などの症状を生じやすい。貧血、感染合併症、出血の症状が多くみられる。また、皮下結節または圧痛のある易出血性皮膚病変と、リンパ節腫大、中枢神経系白血病の徴候を生じることもある。

検査上の特徴

 

末梢血

慢性骨髄性白血病(CML)の主な特徴は、白血球数が多いことにあり、25×109/Lより多いのが普通で、100×109/Lを上回ることも多く、周期的に変化することがある。原因不明の持続性白血球増多症(例えば12~15×109/Lを上回る)の所見があり、感染症に罹患しておらず、白血球数の増加する原因が他になければ、CMLの精密検査を促すべきである。

一般に白血球分画において芽球から成熟するまでの各成熟段階の顆粒球(すなわち好中球、好酸性、好塩基球)が認められ、形態学的には顆粒球は正常である。好塩基球は増加するものの、末梢血中の好塩基球が7%以上となる患者は10%~15%しかいない。好酸球もやや増加することが多い。リンパ球絶対数はTリンパ球を犠牲にして増加する。

血小板数の増加は患者の30%~50%でみられ、CML患者のごく一部では1,000×109/Lを上回る。血小板減少症が生じると、一般に病状進行の徴候とみられる。

診断時に軽度貧血を認める患者もいる。

好中球機能は一般に正常もしくは若干低下している一方、ナチュラルキラー(NK)細胞活性は低下している。診断時に一部の患者でT細胞リンパ球のクローン増殖が発見されることがあり、ダサチニブ(一般名スプライセル)治療中に増殖する可能性がある。血小板機能に異常がみられることが多いが、一般に臨床的意義はない。

 

骨髄

骨髄は細胞過多の状態にあり、細胞充実性は75%~90%である。骨髄と赤血球の比は、通常10:1~30:1である。一般に各成熟段階の白血球系列がみられるものの、骨髄細胞の方が優勢である。

巨核球数が発病初期に増加し、異形成の特徴を示すことがある。大きさは典型的な正常巨核球よりも一般に小さい。線維症は診断時に認められることがあるが、疾患進行に伴うことが多く、通常は予後不良の所見である。

 

その他の検査結果

診断時、白血球アルカリホスファターゼの活性は低下している。ビタミンB12とトランスコバラミンの血清中濃度は高く、正常値の最大10倍となることもある。また、尿酸と乳酸脱水素酵素(LDH)の血清中濃度も高いことが多い。

細胞遺伝学的所見と分子的所見

 

フィラデルフィア染色体

慢性骨髄性白血病(CML)はフィラデルフィア染色体を特徴としており、9番染色体長腕と22番染色体長腕との間の均衡型相互転座により生じるもので、t(9;22)(q34;q11.2)と表記される。9q34番染色体に座位するABL1がん原遺伝子は、ほとんどの哺乳類細胞中に発現する非受容体型タンパク質チロシンキナーゼをコードする。22番染色体の切断点はBCR遺伝子の中に生じ、一般にM-BCR(下流:Major BCR)の切断点が関与しており、エクソンb3とb4の間、もしくはエクソンb2とb3の間に位置する。このため、2つの異なる融合遺伝子が形成され、この2つがABL1のエクソン2と、BCRのエクソン13[e13a2(b2a2)]またはエクソン14[e14a2(b3a2)]を接続している。核型分析ではフィラデルフィア染色体が検出されない患者が5%~10%おり、そのうち30%~40%は蛍光インサイツハイブリダイゼーション法(FISH)またはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、もしくは両方によって特定される分子内転位を有する。この分子内転位がみられない患者は、「非定型CML(慢性骨髄性白血病)」、つまり異なる自然経過・予後・治療につながる独特な疾病を有すると考えられる。

翻訳(タンパク合成)で、分子量210kdの新規タンパク質(p210BCR-ABL)が合成される。この新規タンパク質は、正常なABL1と比較すると、著しいキナーゼ活性の亢進がみられ、遺伝子導入マウスにおいてトランスフェクトした細胞をがん化し、白血病を誘発する。切断点は別の領域(m-BCR[上流:minor-BCR]とμ-BCR[Major-BCRよりさらに下流])に生じることも時折あり、異なる転写物につながる(例としてm-BCRではp190BCR-ABL、μ-BCRではp230BCR-ABL)。p210BCR-ABLの発がんメカニズムは明らかでないが、リン酸化反応に応じて、Ras-マイトジェン活性化プロテインキナーゼ経路、Jak-Stat経路、PI3キナーゼ経路、MYC経路などの細胞内経路が活性化される。最終的に、このプロセスは細胞外基質・間質への接着変化や、分裂促進シグナルの構成的活性化、ならびにアポトーシス抑制につながる。

病期分類と予後

 

病期分類システム

予後に影響を及ぼす慢性骨髄性白血病(CML)特性には、年齢、脾臓の大きさ、白血球数、血小板数のほか、芽球・好酸球・好塩基球の末梢血中に占める割合などがある。9番派生染色体の欠失[del der(9)]は患者の10%~15%に認められ、昔ながらの治療法を用いた場合は予後不良との関連がみられる。ただし、9番欠失に関連する予後不良はイマチニブで克服できる。これらの因子は、複数の病期分類システムに組み込まれている。

 

ソーカル(Sokal)リスク分類

よく用いられるリスク分類には、ソーカル(Sokal)予後リスクシステムがある。このシステムでは、以下の公式からハザード関数が算出される:λi(+)/λo(t) = Exp0.0116(年齢 -43.4) + 0.0345(脾臓 -7.51) + 0.188[(血小板/700)2 -0.563] + 0.0887(芽球 -2.10)。実用的な見地から言えば、このスコアはグーグルで容易に見つかるホームページを活用して各種パラメータを入力して算出できる。

このリスク分類は、3つの予後グループで定義されている:1) ハザード比0.8未満[低リスク]、2) ハザード比0.8~1.2[中間リスク]、3) ハザード比1.2を上回る[高リスク]。

ハスフォード(Hasford)リスク分類は、インターフェロン治療を受けた患者におけるリスク群が重複することなく明確に分けることを提案している。ハスフォードスコアは以下の公式から算出される(0.6666 × 年齢 [50歳未満のとき0; 50歳を超えるとき1] + 0.0420 × 脾臓の大きさ[肋骨縁より下 cm] + 0.0584 × 芽球 [%] + 0.0413 × 好酸球 [%] + 0.2039 × 好塩基球 [好塩基球が3%未満のとき0、3%を超えるとき1] + 1.0956 × 血小板数 [血小板数1,500未満のとき0 × 109/L、1,500を超えるとき1]) × 1,000。このスコアに基づき、患者を3つのリスク群に分類できる:低リスク(スコア 780以下)、中間リスク(スコア 780超~1,480以下)、高リスク(スコア 1,480以上)[K1]。イマチニブ時代においてはこの分類では予測しにくい可能性がある。ソーカルとハスフォードの両リスク分類は、キナーゼ阻害薬により寛解する確率を予測する。

治療

 

慢性期

従来の化学療法

インターフェロンやごく最近のキナーゼ阻害薬が開発されるまでは、ブスルファン(ブスルフェクス、ミレラン)およびヒドロキシ尿素が、CML(慢性骨髄性白血病)に最もよく用いられる化学療法薬であった。ブスルファンは現在ほとんど使用されなくなっている。

ヒドロキシ尿素は、CMLと確定診断されるまでのあいだ、白血球数をコントロールするのに用いられることが最も多い。白血球数のコントロールに応じて投与量は患者ごとに調整できる。場合によっては、1日あたり10g~12gの投与が必要になることもある。

ブスルファンとヒドロキシ尿素が、フィラデルフィア染色体を有する細胞の割合を有意に減らすことはないため、急性転化期への移行リスクは変わらない。これら2剤は、最終的な治療(例えばイマチニブや幹細胞移植)導入前に血液学的な症状を一時的にコントロールする目的での使用に限定すべきである。CMLの診断が確定された時点で、直ちにイマチニブ治療を開始するのが望ましい。通常、ヒドロキシ尿素を投与することによる初期の「がん縮小」から有益性は得られず、その必要性もない。

インターフェロン

インターフェロンαにより、慢性骨髄性白血病(CML)患者の70%~80%で血液学的完全寛解が得られ、40%~60%でフィラデルフィア染色体陽性細胞がいくらか抑制され(すなわち細胞遺伝学的寛解)、最大20%~25%で胞遺伝学的完全寛解となる。複数の無作為化試験では、インターフェロンα治療により、細胞遺伝学的寛解、特に完全寛解が得られた患者における延命効果が明らかにされている。

10年生存率は、細胞遺伝学的完全寛解が得られる患者では75%以上であるのに対し、部分的寛解が得られる患者では40%未満で、部分寛解に達しないか寛解しない患者では30%未満である。

インターフェロンとシタラビン(Ara-C)   インターフェロンαと低用量シタラビンの併用は、寛解率を高め(40%~50%)、おそらく延命効果を向上させる。

インターフェロンα治療で細胞遺伝学的完全寛解が得られる患者の約30%は、持続的な分子遺伝学的寛解に達する可能性があり、おそらく治癒する。残りの患者のうち40%~60%は、微小残存病変が存在するものの、10年過ぎても無再発のままである。これを「実質的な治癒」という。

ポリエチレングリコール (PEG)付加型インターフェロンα製剤は、半減期が延び、週1回の投与が可能となり、毒性も低下しうる。

イマチニブは、BCR-ABL以外に、PDGF-R(血小板由来の増殖因子受容体)およびc-KIT遺伝子などのチロシンキナーゼ活性に対する強力な阻害薬である。前治療としてインターフェロンを投与されている場合や、初期治療としてイマチニブを投与されている場合でも、全ての病期の慢性骨髄性白血病(CML)患者においてイマチニブは有意な活性を示している。インターフェロンαによる前治療に不応であった慢性期CML患者のうち55%~85%で細胞遺伝学的寛解が得られ、このうち細胞遺伝学的完全寛解は45%~80%にみられた。細胞遺伝学的完全寛解率は、ソーカルスコアに基づく低リスク患者(89%)または中間リスク患者(82%)よりも、高リスク患者(69%)で低かった。前治療なしで初発時慢性期CMLの治療を受けた患者では、細胞遺伝学的完全寛解率は83%、8年全生存率が85%、無再発生存率が81%であった。

イマチニブ治療による全生存率および無再発生存率は、インターフェロン治療の結果よりも有意に優れている。したがってイマチニブはCMLに対する標準治療になっている。長期的転帰を最適化するため、イマチニブ投与中の患者に対する適切な管理が重要となる。

慢性期患者に対する初期治療としての1日あたりイマチニブ(グリベック)400mgと800mgを比較した無作為化第III相試験の予備結果では、800mg投与患者の方が、より早期時点での寛解率が高く、18ヵ月間の追跡調査における病期進行率も低いことが示唆された(3.2%対1.9%)。この試験を24ヵ月間追跡調査した後の最新報告では、細胞遺伝学的完全寛解率、分子遺伝学的寛解率、無再発生存率、無増悪生存率のいずれにおいても2群間で差は認められなかった。この結果は用量減量と治療中止の割合が高いことが一因となっている可能性があり、特に高用量群でその傾向が強い。全試験期間にわたり薬剤強度を600mg以上に維持した患者では、分子遺伝学的寛解率が有意に高かった。慢性期CML患者に対する初期治療として、インターフェロンとイマチニブの併用、イマチニブ400mg、イマチニブ800mgについて検討した別の無作為化試験では、細胞遺伝学的完全寛解までの期間と、分子遺伝学的寛解までの期間に800mg投与群の改善が、他の2群との比較で示された。この結果から、5年無増悪生存率は、標準用量400mgイマチニブ群(87%)またはイマチニブ+インターフェロン群(91%)と比較して、800mg群(94%)で改善する傾向がある。本研究における長期的有益性は、薬剤強度を高用量に維持することで生じる可能性がある。

投与量   イマチニブの標準用量は、慢性期で400mg/日であり、移行期と急性転化期では600mg/日である。毒性により用量減量が必要となる患者もいるが、1日あたり300mg未満は推奨されない。第I相試験で得られたデータから、用量を300mg/日未満にすると寛解確率は低下することが示されている。

毒性   イマチニブはおおむね忍容性が良好である。ただし、吐き気や、末梢性浮腫または眼窩周囲浮腫、筋痙攣、下痢、発疹、体重増加、疲労などのグレード1~2の有害事象を発症する患者も若干いる。これらの有害事象は軽度のことが多く、治療を必要としないか、適切な早期治療により治癒する。体液貯留は必要に応じて利尿薬を投与すると効果がある。下痢はロペラミドなどの薬剤で抑えられる。吐き気にはプロクロルペラジンまたはプロメタジンなどの薬剤が有効である。筋痙攣はトニック水やキニーネで抑えられる。発疹は抗ヒスタミン薬または副腎皮質ステロイド、もしくは2剤併用(局所用または全身用、もしくは両方)で治療できる可能性がある。

最もよくみられるグレード3~4の有害事象に骨髄抑制がある。好中球減少症は患者の最大45%に認められ、血小板減少症は最大25%に、貧血は10%に認められる。グレード3以上の好中球減少症(好中球数109/L未満)または血小板減少症(血小板数50 × 109/L未満)で治療をいったん中止し、この数値を超えたところで再開する。2週間経っても回復しなければ、投与量を減量することがある。グレード1または2の貧血・好中球減少症・血小板減少症では、治療中断および用量減量は一般に推奨されない。治療開始から最初の2~3ヵ月間は、骨髄抑制が生じやすく、これを抑えるには治療中断して詳細に観察するのがベストである。持続性または反復性の骨髄抑制の治療には、造血成長因子(顆粒球コロニー刺激因子 [G-CSF、フィルグラスチム(ニューポジェン)]、オプレルベキン[Neumega]、エリスロポエチンの使用で十分な効果が得られている一方、このアプローチの長期的安全性については評価する必要がある。

慢性期CML(慢性骨髄性白血病)患者に対する初期治療としてのイマチニブとニロチニブ(タシグナ400mg[1日2回]または300mg[1日2回])を比較した無作為化試験の予備結果が最近報告された。12ヵ月の時点での細胞遺伝学的完全寛解率は、イマチニブ投与群(65%)と比べて、ニロチニブ投与群(400mgで78%、300mgで80%)の方が有意に高かった(P<0.001)。分子遺伝学的寛解率でもニロチニブに同様の優位性がみられた(12ヵ月の時点において、ニロチニブ400mgで43%、ニロチニブ300mgで44%、イマチニブで22%、P<0.001)。最も重要なのは、初期報告の時点での組織学的進展率が、イマチニブ投与群(4%)よりも、ニロチニブ投与群(両用量群とも1%未満)で有意に低かったことである。初期治療としてのダサチニブ100mg/日とイマチニブ400mg/日を比較した類似試験では、治療から12ヵ月の時点で、確定した細胞遺伝学的完全寛解率(ダサチニブで77%、イマチニブで66%、P=0.007)と分子遺伝学的寛解率(それぞれ46%対28%、P<0.0001)の改善が報告された。この結果から、イマチニブと比較して、ダサチニブで組織学的進展(進行)率が改善したことになる(イマチニブ3.5%に対しダサチニブ1.9%)。以上の結果をふまえ、第二世代キナーゼ阻害薬は、初発時慢性期CML患者に対する標準的初期治療となっている。

イマチニブをインターフェロンと併用することについて検討している試験がいくつかある。フランスの試験では、イマチニブ単剤との比較で、2剤併用した方が分子遺伝学的完全寛解率を改善させることが示唆された。一方、別の2件の試験(ヒールマン[Hehlmann]らの試験と、コルテス[Cortes]らの試験)では、こうした併用投与による改善効果はみられなかった。この3件の試験で、無再発生存率、組織学的進展率、全生存率にどれも改善がみられなかった点は重視される。以上からインターフェロンとイマチニブの併用はせいぜい研究対象でしかない。

モニタリング(観察)   治療目標は、血液学的寛解(ヒドロキシ尿素)から、 細胞遺伝学的寛解(インターフェロン-α)へ、さらにはイマチニブ時代の分子遺伝学的寛解へと進化している。治療開始前に全患者を細胞遺伝学的解析によって評価する必要があり、これにはベースライン定量PCR解析が役立つ。従来からの細胞遺伝学的解析は、全核型分析(クローン進化、フィラデルフィア染色体陰性細胞の染色体異常の分析)についての有益な情報を提供するもので、治療開始前と追跡期間中に行うことが重要である。この情報はFISH(蛍光インサイチューハイブリダイゼーション)法やPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法では得られないほか、予後に影響を与えるものである。細胞遺伝学的解析は、最初の1年間に3~6ヵ月ごと、その後12~24ヵ月ごとに行うことが推奨される。定量PCR法は3~6ヵ月ごとに行うことが提案される。細胞遺伝学ならびにリアルタイムPCRを用いて患者を追跡しないのは不適切といえる。細胞遺伝学的完全寛解は、生存確率の改善に関連する唯一の寛解であることを念頭に置くことが大切である。分子遺伝学的寛解は、無再発生存率の改善と関連することがある一方、全生存率とは関連しない。

治療期間   現時点で治療期間は明らかになっていない。PCRで陰性(検出限界以下)を示す患者がわずかにいる。2件の試験(ロス[Ross]らの試験とマーン[Mahon]らの試験)では、イマチニブ治療期間中に2年以上持続的なPCR陰性が認められる患者に対し、治療中止を提案している。治療中止後、患者の約60%が再発した。再発のほとんどは最初の6ヵ月以内に生じ、イマチニブを再開すると効果がみられることが報告されている。以上の結果から、一部の患者はイマチニブ治療中止後に分子遺伝学的寛解を維持することがあるものの、再発リスクは高いことが示唆される。したがって、治療中止の調査を目的とする臨床試験の被験者でない限り、治療は無期限に継続されるべきである。

イマチニブ不応(効果なし)   最も多く特定されるイマチニブ耐性のメカニズムは、ABLキナーゼ領域の変異である。変異はイマチニブ耐性患者の40%~60%に検出され、Pループに最もよく発現する。全ての変異が同程度のイマチニブ耐性を付与するわけではなく、一部の変異はイマチニブ濃度が上昇すると回復することがある。最も強い薬剤耐性を示す変異はT315Iである。Pループ変異は予後不良に関連すると報告されているが、こうした学説は全ての試験で裏付けられているわけではないので、変異を発現部位別にグループ化するよりも各変異を個別に考慮するのが適切かもしれない。

分子遺伝学的寛解の到達に失敗した場合、つまり寛解を得られなかった場合に基づく治療変更は、現時点でほとんどの場合、正当化できない。18ヵ月間にわたる治療後、分子遺伝学的寛解が得られなかった患者は、分子遺伝学的寛解以上の効果が得られた患者と比べ、予後が劣っていても、7年時点での無再発生存確率は依然として86%である(ただし細胞遺伝学的完全寛解が認められる場合)。多くの場合、この再発とは細胞遺伝学的寛解の消失だけを意味している。提案される別の治療選択肢に重大な死亡リスクまたは合併症リスクが認められるなら、そのリスクは不必要なものと考えられる。十分な寛解が得られた患者にしか存在しない変異の臨床的意義はまだ明らかにされていない。よって、治療無効の臨床所見がみられる患者における変異を調査すべきである。この状況下では、治療変更は変異が検出されるか否かで指示されるが、場合によっては特定の変異によって治療が選択されることもある。

慢性骨髄性白血病(CML)の研究組織(European LeukemiaNet)は、治療無効(効果なし)と、準至適効果(薬剤で効果は得られているが長期的に疾患進行リスクがある)に関する基準を確立しており、標準的な判定基準となっている。この基準では、得られた効果と、その効果が得られるまでの期間を重視している。治療無効の基準を満たした患者には、第二世代キナーゼ阻害薬の治療を提案すべきである。準至適効果がみられる患者には、至適管理法を示す参照可能なデータはないが、一般にイマチニブの増量が推奨される。準至適効果のみられる患者の薬を第二世代キナーゼ阻害薬へ切り替えた場合の有益性に関しては参照可能なデータがない。

第二世代チロシンキナーゼ阻害薬   第二世代キナーゼ阻害薬はイマチニブ耐性を克服するために開発された。これらの薬剤のうち2剤(ダサチニブとニロチニブ [タシグナ])は規制当局の承認を得ており、残りは開発中にある(ボスチニブ[ボスチニブ(bosutinib)])。これら2剤は、野生型BCR-ABLと、臨床的に意義のあるBCR-ABL変異のほぼ全て(ただしT315I変異を除く)を抑制することが示されている。初回臨床試験の結果から、両剤における有意な臨床活性が示されている。

ダサチニブ   ダサチニブ(スプライセル)は、イマチニブと構造的な関連性はなく、BCR-ABLの不活性型構造と活性型構造の双方を拘束する。また、ダサチニブはSRC遺伝子とABL遺伝子を遮断するデュアル阻害剤であり、イマチニブよりも約100倍強力である。

ダサチニブの初回第II相試験では70mg1日2回が使用された。イマチニブ耐性または不耐容となった後、全ての病期分類の患者において有意な臨床活性がみられ、細胞遺伝学的完全寛解率が慢性期で53%、移行期で33%、骨髄急性転化期で27%、リンパ性急性転化期で46%であった。寛解期間には病期分類との相関がみられ、慢性期における5年時点での無増悪生存率が57%、移行期における24ヵ月時点での無増悪生存率が46%であった。一方、無増悪生存期間の中央値は、骨髄急性転化期で5.6ヵ月、リンパ性急性転化期で3.1ヵ月であった。

最も重篤な有害事象の一部には、骨髄抑制(グレード3~4の好中球減少症および血小板減少症、いずれも患者の約50%に発現)、胸水貯留、胃腸出血(特に進行期)などがある。異なる投薬スケジュールにより、有害事象の内容と頻度(毒性プロファイル)が改善する可能性がある。無作為化試験におけるダサチニブ100mgの1日1回投与は、70mg 1日2回(ならびに50mg 1日2回または140mg 1日1回)と比較すると、骨髄抑制および胸水貯留の有意な減少に関連した。治療効果についても同じで、100mgの1日1回投与で無増悪生存率が改善される傾向がみられた。

ダサチニブはイマチニブ耐性または不耐容を生じた全病期の慢性骨髄性白血病(CML)患者に対する治療薬として承認されている。推奨される標準用量は慢性期患者で100mg 1日1回、進行期患者では140mg 1日1回である。また、最近になってダサチニブが慢性期患者に対する初期治療としての適応で承認されており、標準用量は100mg 1日1回である。

ニロチニブ   ニロチニブはイマチニブの化学構造に基づき開発され、BCR-ABLへの結合改善ならびに選択性の向上を目指して改良された。こうした改良でBCR-ABLに対するイマチニブよりも約10倍以上強力な薬剤になっている。

第II相試験では、イマチニブに不応となった後、ニロチニブ(400mg 1日2回)を投与された患者で有意な活性が明らかとなっている。イマチニブ耐性または不耐容後の細胞遺伝学的完全寛解率は、慢性期に治療を受けた患者で44%、移行期の患者では19%であった。寛解は持続的なものであり、24ヵ月時点での持続性細胞遺伝学的完全寛解率は、慢性期に治療を受けた患者の84%で認められた。移行期における12ヵ月時点での無増悪生存率は57%である。最も重篤な毒性には、骨髄抑制(グレード3~4の好中球減少症または血小板減少症、いずれも患者の約30%に発現)と、一般に一過性かつ無症候性の生化学的異常(間接ビリルビン・脂肪分解酵素・グルコースの上昇)が報告されている。また、補正QT延長(全てのキナーゼ阻害薬に共通する副作用)が生じる可能性もあるが、有意な延長がみられるのは患者の3%未満であり、無症候性であることが極めて多い。ニロチニブはイマチニブに耐性または不耐容を生じた慢性期または移行期の患者に対する治療薬として現在承認されており、イマチニブ不応後に治療を受ける患者に対する標準用量は400mg 1日2回である。最近になりニロチニブは慢性期CML(慢性骨髄性白血病)に対する初期治療としても承認され、この適応での標準用量は300mg 1日2回となっている。ニロチニブは食物により吸収率が著しく増す可能性があるため、空腹時に服用すべきである。

イマチニブ不応後の第二世代キナーゼ阻害薬(ダサチニブとニロチニブ)による治療で得られる寛解確率および無再発生存確率を予測するため、予後モデルが開発された。第二世代キナーゼ阻害薬で治療された123人の多変量解析で、長期的転帰に有意かつ独立して関連している2つの要因が発見された。1つは全身状態(スコア1以上で有害)、もう1つはイマチニブの前治療による細胞遺伝学的寛解(前治療で細胞遺伝学的寛解が得られないと有害)である。24ヵ月時点での無再発生存確率は、有害転帰につながる特性が全くない患者で78%、1つある患者で49%、2つある患者では20%であった。

その他の薬剤   その他の試験薬はイマチニブ治療が無効の患者のために開発されている。ボスチニブ(bosutinib)はSRCとABLに対する新たな阻害薬であり、大半のBCR-ABL変異に阻害活性を有する。初期結果では、イマチニブ治療で効果が得られなかった患者における有意な活性が示唆されている。ボスチニブ(bosutinib)には、毒性(胸水貯留と骨髄抑制など)の減少につながりうるようなPDGF-RおよびKIT遺伝子に対する阻害活性がごくわずかしかないか、全くない。ただし、同剤にはLYNとABLに対する阻害活性が認められるほか、イマチニブをはじめとするキナーゼ阻害薬に不応となった患者にも活性が示されている。イマチニブ耐性または不耐容となった後、ボスチニブ(bosutinib)が投与された299人のうち47%で細胞遺伝学的完全寛解が得られた(イマチニブ不耐容で59%、イマチニブ耐性で43%)。寛解は持続的なもので、T315I以外の幅広い変異で認められる。主な有害事象は下痢と発疹(グレード3がともに9%、治療中止につながったのは下痢2%と発疹1%)。

T315I変異を有する患者(現在使用されている全ての薬剤に耐性を持つ)の治療のために、いくつかの薬剤が開発されている。開発段階の薬剤には、omacetaxine(ホモハリントニン)、AP24534(ポナチニブ)、DCC-2036、MK-0457、XL 228、PHA-739358(danusertib)などがある。これらの試験の初期結果では、一部の患者における活性が示唆されている。

同種骨髄移植

同種骨髄移植は慢性骨髄性白血病(CML)を治癒に導く可能性があるものの、慢性期の移植片対宿主病(GVHD)などの合併症による死亡および再発が、移植から何年も経過した後に起こることがある。移植結果は、慢性期の患者の方が、移行期または急性転化期の患者よりも良好である。慢性期では、長期生存率50%~80%と、無病生存率30%~70%が得られる。骨髄移植の役割は、イマチニブから得られる結果を加味して、現在変わってきている。

寛解の予測因子   診断後1年~3年以内の早期骨髄移植は、発症後期に施行される骨髄移植よりも良好な転帰と関連する可能性がある。また、若年患者の方が、高齢患者よりも転帰が良好であり、20歳~30歳よりも若い人での予後が最良である。EBMT(欧州造血細胞移植学会)によるリスクスコアの使用は、転帰が良好となりうる患者と、そうでない患者を区別するのに役立つ。

全身照射(TBI)などの移植前処置が従来から用いられているが、非TBIレジメン(ブスルファンとシクロホスファミドなど)でも同様の結果が得られている。標的指向型ブスルファンを用いた移植前処置は、有効性の維持と、レジメンに関連する毒性の減少に関連していることが最近分かった。また、プリン同族体を含む骨髄非破壊的前処置(ミニ移植)は、従来の骨髄移植の対象外となる内科的症状を有する患者もしくは高齢者への移植に使用拡大されるように最近検討されている。

移植片対宿主病(GVHD)   骨髄移植による主な合併症に移植片対宿主病がある。移植片のT細胞を除去すると、合併症の出現率が低下するが、再発率と移植片生着不全率を上昇させるという犠牲を払う。

適合する血縁ドナーの代わり   適合の血縁ドナーがいない患者では、それに代わる選択肢として適合非血縁ドナーによる移植が妥当である。患者1,432人を対象とした全米骨髄ドナープログラム(National Marrow Donor Program)から得られた9年にわたる知見で、3年生存率は37.5%であることが報告された。早期移植により転帰は一層良好となり、慢性期に移植した患者では3年無病生存率が63%となる。移行期、急性転化期、または第2慢性期に移植した患者の転帰は、慢性期よりも劣っている。

骨髄移植後の再発   ドナーの白血球注入は、骨髄移植後に再発した患者の治療戦略として最も有効である。この治療戦略を用いると、患者の70%~80%で細胞遺伝学的完全寛解が得られる。細胞遺伝学的または分子的な再発時に治療を受ける患者で最良の結果が得られる。イマチニブもまた骨髄移植後に再発する患者に対し有効である。血液学的完全寛解が報告されたのは患者の70%以上で、細胞遺伝学的寛解は58%であり、慢性期に再発した患者で最良効果が得られた。

推薦される治療

イマチニブの長期的結果は良好で、8年の時点における全生存率は約90%であった。ただし、患者の35%以上では最良の転帰が得られない(具体的には、少なくとも細胞遺伝学的完全寛解への到達・維持がみられないか、もしくは忍容性がない)。全ての慢性期患者には、初期治療として標準用量のイマチニブ(400mg/日)、もしくは第二世代キナーゼ阻害薬ニロチニブ(300mg 1日2回)またはダサチニブ(100mg 1日1回)を提案することが推奨される。最近の無作為化試験で得られた結果では、イマチニブよりも、ダサチニブまたはニロチニブの方が優れた初期結果であることが示唆されている。この結果から、第二世代キナーゼ阻害薬(ダサチニブまたはニロチニブ)を慢性骨髄性白血病(CML)患者への優先的選択肢とすべきことが示唆される一方、イマチニブ不応後に第二世代キナーゼ阻害薬へ切り替えた患者よりも、最初から同剤で治療した患者の方が、長期的転帰が優れているのかどうかはまだ分かっていない。最近の解析では、イマチニブに不応となった患者に対し、第二世代キナーゼ阻害薬を用いた二次治療を検討した場合、7年時点での無再発生存率が最低88%まで改善することが示唆された。期待する結果が既定時期に得られていることや、寛解の遅れが認められた時点で直ちに治療を変更すること(治療不成功はおそらく6ヵ月時点での細胞遺伝学的完全寛解の欠如として定義)を判断するため、患者を注意深く経過観察する必要があり、特にイマチニブ治療患者でその必要がある。至適効果を示している患者には、無期限に途切れなく治療を継続すべきである。準至適効果がみられる患者には、用量漸増が推奨される。イマチニブに不応となった患者は、薬を第二世代キナーゼ阻害薬の1つに変えることが必要となる。

慢性骨髄性白血病(CML)に対する同種幹細胞移植の役割は変わってきており、現在では主に二次治療または三次治療の選択肢とみなされている。イマチニブに不応となった患者のほとんどには、移植、もしくは第二世代キナーゼ阻害薬の初期トライアルを検討すべきである。十分な寛解が早期時点で得られることが重要であり、特に移植選択肢のある若年患者で重視される。6ヵ月の時点で細胞遺伝学的寛解がみられないか、12ヵ月までに細胞遺伝学的寛解がみられなければ、移植を考慮する必要がある。T315I変異が認められる患者、もしくは2剤以上のキナーゼ阻害薬に不応となった患者では、幹細胞移植の候補者として適している場合、移植が検討されるべきである。これらの患者の移植を慢性期に行なうと、幹細胞移植の結果がはるかに良好なものとなる。したがって、T315I変異が確認された患者が、幹細胞移植の至適候補者である場合、慢性期において幹細胞移植が考慮されるべきである。そうでなければ、臨床試験に参加するのが望ましい。

 

移行期と急性転化期

イマチニブ

イマチニブは移行期における慢性骨髄性白血病(CML)患者にも有効である。イマチニブ600mg/日を投与された移行期患者の71%で血液学的寛解が得られた。細胞遺伝学的寛解率は24%であり、12ヵ月間の無増悪生存が67%にみられた。この結果はイマチニブ400mg/日投与された患者の結果よりも有意に優れていることから、移行期患者における標準用量は600mg/日となった。急性転化期においては、イマチニブ投与で患者の52%が血液学的寛解に達し、31%が4週間以上にわたる寛解を維持した。しかし、寛解期間中央値は、寛解維持患者に絞っても(つまり最低4週間継続)、10ヵ月間にすぎなかった。イマチニブによる治療時、クローン進化が認められる患者では、クローン進化の認められない患者よりも、寛解する確率が低く、生存期間も短かった。

ニロチニブとダサチニブは、進行期の患者においても有意な臨床活性が認められている。移行期では、血液学的完全寛解率がニロチニブで26%とダサチニブで50%であり、細胞遺伝学的完全寛解率がそれぞれ19%と33%と報告されている。急性転化期では、血液学的完全寛解率はニロチニブ11%~13%、ダサチニブ26%~29%で、細胞遺伝学的完全寛解率はそれぞれ27%~46%と29%~32%であることが報告された。両剤の使用は、イマチニブなどの前治療で効果が得られなかった患者に検討されるべきである。2剤とも移行期患者への適応で承認されているが、急性転化期への適応では現在ダサチニブしか承認されていない。ただし、進行期における寛解期間はより短く、特に急性転化期の患者でその傾向が強い。転帰を改善するために、これらの薬剤を他の薬剤(例えば標準的化学療法)と併用することが検討されている。

骨髄移植

同種骨髄移植に関しては、慢性期患者の結果と比較すると、移行期または急性転化期の患者における結果が悪く、4年生存率は10%~30%にすぎない。診断後1年未満で骨髄移植を施行される移行期患者(クローン進化だけに基づき判定)では、4年生存確率が74%である。第二世代キナーゼ阻害薬治療で寛解する急性転化期患者では、適したドナーがいれば、第2慢性期にて骨髄移植が提案されるべきである。


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