脂質異常症

◆脂質異常症とは◆

脂質異常症とは血液中のコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)の値が異常になる病気です。かつては高脂血症と呼ばれていましたが、2007年に改名されました。

脂肪異常症は年々増加傾向にあり、現在の日本では約4人に1人が何らかの脂質異常症にあるとされています。その大半が食の欧米化に伴う動物脂肪過剰の食事、飽食、運動不足、喫煙、過剰なアルコール摂取といった生活習慣の乱れを原因とするもとのとされていますが、中には遺伝、加齢、他の疾患によって発症する場合もあります。

コレステロールとは主に肝臓で生成される脂質の一つです。細胞膜や、ホルモンなどの原料として利用されたり、脂肪の吸収を助けるという働きを持っていますが、血中に溶けることができないために、LDL(低比重リポタンパク)、HDL(高比重リポタンパク)と呼ばれるリポタンパクと結合して血液中を移動しているため、LDLコレステロール、HDLコレステロールといった呼ばれ方をされています。

脂質異常症の一つである高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症とは、血中に過剰に存在しているコレステロールが、血管内皮にプラ-クと呼ばれる脂肪性質の沈着物を形成し、血管内腔を狭めている状態を指しています。このようなコレステロールによるプラ-クの形成は、血管壁の柔軟性や弾力性を失わせてしまうため、致命的な冠動脈疾患や脳動脈疾患を引き起こすことになる動脈硬化症発症の危険因子とされています。

コレステロールの中でも、実際に血管壁に蓄積されてプラ-クを形成するのは、肝臓から各組織に運ばれているLDLコレステロールです。このことからLDLコレステロールは通称で、『悪玉コレステロール』と呼ばれており、一方のHDLコレステロールは血管壁から過剰なコレステロールを取り除き肝臓から排泄する働きを持っているため『善玉コレステロール』といった呼ばれ方をされています。

・高LDLコレステロール血症:
血液中の総コレステロール値が220mg/dl以上、或いはLDLコレステロール値が140mg/dl以上の状態
・低コレステロール血症
HDLコレステロール値が40mg/dl未満の状態

一方の中性脂肪(トリグリセライド)は万が一に備えて体に貯蔵される脂肪で、肝臓で生成されたり食物から摂取されます。この中性脂肪(トリグリセライド)が血液中に150md/dl以上となるのが高トリグリセライド血症で、皮下脂肪となって肥満を引き起こしたり、肝臓に蓄積し、脂肪肝の原因となるとされています。また、血液中の過剰な中性脂肪(トリグリセライド)にはHDLコレステロールを減少させ、LDLコレステロールを血液中に増加させてコレステロールの血管への蓄積を促進したり、血小板の凝縮を促進することによって血栓をできやすくするようにするといった弊害も認められています。

脂質異常症は血液検査における血液中の脂質の異常値以外にはこれといった特徴的な症状もなく、日常生活に支障を起こすこともありません。逆に自覚症状が現れた時には動脈硬化が進行しているため、突然心筋梗塞や脳梗塞を発症することになります。このように脂質異常症は、知らない内に動脈硬化を進行させ、突然命に関わる病気を引き起こすことから、高血圧と同様にサイレントキラー(静かなる殺人者)と呼ばれています。

脂質異常症の治療は、血中のLDL コレステロール値を下げ、動脈硬化の進行を阻害することが目的となります。

LDLコレステロール値の増加は生活習慣の乱れが大きな要因であるために、その改善はまず食事療法、運動療法といった生活習慣の改善が第一とされています。
特に食の欧米型に伴う動物性脂質の過剰摂取は、LDLコレステロール値の増加や、脂質異常症を増悪させる肥満の原因とされているため、エネルギー量、コレステロールを多く含む食品の制限、糖分の制限などといった食生活の見直しが重要とされています。

また同時に適宜な運動による適正体重の維持も欠かせないとされています。

しかしそれでも十分な効果がみられない場合には薬によるコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)のコントロールが必要となります。

◆脂質異常症の治療薬◆

HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤)

コレステロール吸収阻害薬(コレステロール輸送タンパク阻害薬)

フィブラート系薬剤

その他