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2010-10-28

ソース原文(オリジナル):サイエンスデイリー

インスリン分泌細胞の研究が、糖尿病の治療を改善に導く可能性

サイエンスデイリー(米科学誌[2010年10月28日]) — 人体でインスリンを分泌するβ(ベータ)細胞は、30歳を過ぎると複製されなくなる。このことは、臨床医が優れた糖尿病の治療を行えるようになるまであと一歩のところである可能性を示している。

1型糖尿病は自己免疫によるβ細胞の損失が原因であるのに対し、2型糖尿病はβ細胞の相対的機能不全によるものである。β細胞が出生後に複製されるのかどうかは、未だ解明されていないが、糖尿病の治療計画には極めて重要とされている。

1950年代と1960年代の地上核実験によって生まれた放射性炭素14年代測定法を用いて、30歳過ぎてから分裂しないままのβ細胞数を研究者らが測定した。

ローレンス・リバモア国立研究所(Lawrence Livermore National Laboratory)の研究者ブルース・ブーフホルツ(Bruce Buchholz)氏と、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)の共同研究者らは、成人β細胞のターンオーバー(代謝回転)と寿命を検討するために2つの方法を用いた。

ブーフホルツ氏は、ローレンス・リバモア国立研究所で加速器質量分析法を用いて、β細胞のDNA内の炭素14量を測定したところ、30歳を過ぎると、身体では新しいβ細胞を産生しなくなり、加齢とともにインスリン分泌能が低下することを突き止めた。

大気中の炭素14量は、冷戦までは比較的安定した状態が保たれていたが、冷戦時代の地上核爆弾実験により急増、つまりピークに達し、1963年に地上実験が廃止となったあと徐々に減少した。この大気中の炭素14の上昇が、過去57年のクロノメーターとして役立つ。

DNAは細胞が最後の細胞分裂を果たしたあとに安定するので、DNA内の炭素14の濃度は、細胞が生まれたときの日付マークとなり、ヒトの細胞の年齢を示すのに利用できる。

ブーフホルツ氏は「β細胞は、約30歳までターンオーバーし、その後生涯にわたって変わらないことを、我々は突き止めた」と述べた。「この研究結果は、1型と2型糖尿病に影響するものである」

1型糖尿病は、身体でβ細胞が攻撃される自己免疫疾患である。ほとんど明らかにされていない遺伝的素因と環境因子が、糖尿病の発症に関連することが示唆されている。発病開始は小児期が多いが、一生を通じて起こりうるものであり、生涯にわたりインスリン注射/ポンプ療法が必要となる。これは単に身体にインスリン生成能力が欠如しているにすぎない。一方、2型糖尿病(成人発症型糖尿病と呼ばれることも多い)は、血糖値を調節するのに十分なインスリンを分泌する能力が加齢とともに低下する高齢者において多くみられる。また、肥満者ではインスリン需要量の増加が原因で発症することが多い。

ブーフホルツ氏は「加齢に伴うβ細胞の損失が原因となる可能性がある」と述べた。「成人期には新しいβ細胞が産生されないので、血糖値をコントロールする細胞が足りない可能性がある」

また、肥満者の割合が増えるにつれ、2型糖尿病の発症率も増加し、現在では肥満の小児で糖尿病が見つかり始めている。

ブーフホルツ氏は、失われたβ細胞を代替するための幹細胞治療の研究が積極的に行われているとした。「しかし、今回の新たな研究結果からは、成人期において身体にもっと多くのβ細胞を産生させることが、自然なプロセスでなければ、どれほど簡単にいくものなのかは明確ではない」と同氏は述べた。「表面上は、本来身体が自然に行なうことを、うまく誘導して身体に行わせることは、実現性が高いように思える」

本研究は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)の米国国立糖尿病・消化器・腎疾患研究所(National Institute of Diabetes, Digestive and Kidney Diseases:NIH)とNIH/国立研究資源センター(National Center for Research Resources)から研究助成を受けて行われた。本研究は、ジャーナル・オブ・クリニカル・エンドクリノロジー&メタボリズム(アメリカ内分泌学会誌)10月号に掲載された。