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2013-04-17

ソース(記事原文):tctmd

コルヒチンで糖尿病患者の金属ステント再狭窄が減少

tctmd(2013年4月17日)― キム・ダルトン(Kim Dalton)著

要点:

・金属ステントを留置した糖尿病患者を対象としたコルヒチンの検討
・経口の抗増殖薬が6ヵ月時点のステント内再狭窄を半減
・金属ステント再狭窄は考えられているほど多くない可能性が論説で示唆

米国心臓病学会誌(Journal of the American College of Cardiology)2013年4月10日号オンライン版に掲載された無作為化試験によれば、糖尿病患者に金属ステント(ベアメタルステント)を留置した後、低用量コルヒチンを連日投与すると、6ヵ月時点のステント内再狭窄リスクが半減する。抗炎症および抗増殖作用を持つ薬剤は一般に痛風の治療に用いられるが、新生内膜肥厚におけるその他の評価項目もまた改善させる。

ギリシャのアテネにあるアテネ総合病院「G.Gennimatas」のジョルジオ・ジアンノポウロス(Georgios Giannopoulos)博士を中心とする研究者らは、糖尿病患者のうち、薬剤溶出性ステントに禁忌で、金属ステントを留置された患者196人を対象に、コルヒチン(0.5mgを1日2回)を6ヵ月間投与する群(100人)とプラセボを投与する群(96人)のいずれかに無作為に割り付け、血管造影所見と血管内エコー所見を検討した。両群は人口統計学的特性と臨床的特徴がよく類似していた。

ステント内再狭窄が半減

6ヵ月時点で、コルヒチン群における血管造影上ステント内再狭窄率(主要評価項目)は、プラセボ(対照)群の半分を示し、オッズ比は0.38(95% CI:0.18-0.79)、1症例回避するための治療必要数は6であった(95% CI:3.4~18.7)。また、新生内膜肥厚における血管造影パラメータ(遠隔期内径損失や最小血管径など)においても、コルヒチンの方が優れていた(表1)。

表 1. 6ヵ月時点の血管造影パラメータ

コルヒチン
(100人)
プラセボ
(96人)
P値
ステント内再狭窄 16% 33% 0.007
遠隔期内径損失, mm 0.4 0.9 < 0.01
最小血管径, mm 2.8 2.3 < 0.01

血管内エコー所見でも同じパターンが示され、コルヒチン群のステント内再狭窄率において44%の相対的減少が認められ(オッズ比0.42、95% CI:0.22-0.81)、1症例回避するための治療必要数は5であった(95% CI:3.2~18.1)。ステント内の血管内腔面積の減少も、コルヒチン群の方が少なかった(1.6mm2対2.9mm2、P=0.002)。

追跡調査期間中、コルヒチン群で1人死亡(脳卒中)し、プラセボ群でも同じく1人死亡(肺水腫)した。9人(コルヒチン群4人とプラセボ群5人)が再処置を受けた。

胃腸症状の訴えがコルヒチン群において最も多い有害事象であり、下痢または悪心の報告はコルヒチン群16%、プラセボ群7%であった(P=0.058)。筋肉痛と筋痙攣を生じた患者の割合は、コルヒチン群とプラセボ群で同程度であった(15%対10%、P=0.336)。肝毒性や血液毒性の報告例はなかった。

全体で、180日の治療完了前に試験薬を中止したのはコルヒチン群の17%と、コントロール群の9%であった(P=0.116)。ただし、コルヒチン投与患者の方が、プラセボ投与患者よりも早い時期に治療中止していた(平均継続日数:26日対47日、P=0.03)。また、コルヒチン群では、治療を早期中止した患者の方が、完遂した患者よりも、遠隔期内径損失が大きかった(0.8mm対0.3mm、P=0.025)。試験脱落者では血管造影上のステント内再狭窄率が高くなる傾向がみられた(29.4%対13.3%、P=0.141)。

二重の再狭窄抑制作用

著者らによれば、再狭窄の分子機構には炎症が大きな役割を担っており、コルヒチンには強力な抗炎症作用があり、免疫過程で複数の細胞成分に働きかけるほか、紡錘体破壊や微小管阻害を介する抗増殖作用を伴う。

これらの性質に基づくと、コルヒチンは再狭窄の予防に役立つことが期待される、とジアンノポウロス氏らは述べている。バルーン血管形成術の先行研究(参考文献:O'Keefe JH Jr,et al.J Am Coll Cardiol.1992;19:1597-1600)における薬剤開発失敗の原因は、ステント留置術の条件下(ほとんどが新生内膜肥厚)と、血管形成術の条件下(新生内膜肥厚に加えてリコイル[血管の弾性的再収縮]と血管再構築)における再狭窄の異なる機序によるものである、と同氏らは考えている。

著者らは、今回の研究における標的病変血行再建術施行率(全体の4%)と、血管造影上の再狭窄率(24%)との間の顕著な相違は、おそらくステント内再狭窄患者の大部分が無症候性であったことが原因ではないかとしている。同氏らによれば、後者(血管造影上の再狭窄率が24%)の理由は以下の3つからなる。1) 糖尿病における虚血は無症候性であることが多い、2) 全患者は至適薬物療法を受けていた、3) ステント内再狭窄患者の約3分の2は70%未満の狭窄(血流障害をきたさないレベル)であった。

金属ステントはあまり再狭窄を起こしやすくない?

カナダのトロントにあるサニーブルック健康科学センター(Sunnybrook Health Sciences Centre)のブラッドリー・ストラウス(Bradley H.Strauss)博士は、付随論説で、さらなる試験を実施して同条件下での臨床的有用性を裏付ける必要があると指摘し、金属ステントを留置した糖尿病患者におけるコルヒチンの使用に注意を促した。

最新データから、インスリン非依存型糖尿病の金属ステント再狭窄に対する再処置率が今まで考えられていたよりも少なく、非糖尿病患者と同程度でありうることが示唆されており、これを加味すると、一層慎重な見方が必要とされる、と同氏は補足した。

ストラウス氏によれば、全身性抗増殖薬以外を検討すると「パクリタキセル溶出バルーンが再狭窄を予防するための有力な選択肢とみられ、これは初回血行再建術時のコバルトクロム金属ステントと併用する場合、もしくは金属ステントまたは薬剤溶出性ステントで生じる再狭窄の更なる再発を予防するための治療として用いられる」という。

TCTMD(心臓関連の情報提供サイト)との電子メールのやり取りで、クリーブランドクリニック(オハイオ州クリーブランド)のスティーブン・エリス(Stephen G.Ellis)博士は、コルヒチンの血管造影上の効果の背景にある作用機序は生物学的に納得できるものであり、同じことがその他様々な抗炎症性・抗増殖性の薬剤にも当てはまるとしている。同氏は、ステロイドが金属ステント留置患者の再狭窄率および血管抵抗を有意に減少させることを示した最近のメタ分析(参考文献:Sardar P,et al.J Invasive Cardiol. 2012;24:96-103)に言及し、これらの薬剤の多くはかなり有毒であり、副作用による試験脱落者がコルヒチン群でさほど多くなかったのは意外であるとしている。

エリス氏は、金属ステントを留置した非糖尿病・糖尿病患者では、コルヒチンが付与する血管造影上の有益性が同じであると予想されるとしている。また、再狭窄を防ぐのには3~4ヵ月投与するだけで十分であると考えられるが、より短期間についても検討してみるべきであるとも述べた。

同条件下で薬剤塗布型バルーンが再狭窄に対して有効であることが示されれば、金属ステントと経口コルヒチンの併用に勝るものであると考えられるが、その一因には全身性副作用が少ないことがある、とエリス氏は指摘している。

試験の詳細

適切な大きさになるノンコンプライアントバルーン(外径が標準径以上に増加しにくいバルーン)を用いた後拡張が全ステントで行われた。ステント先端の目立った残留粥腫量や同先端で解離した内膜の内腔への突出を確認することと、ステント拡張・付着圧着を最適化することを目的として、留置後に血管内超音波検査を行った。


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