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2012-12-25

ソース(記事原文):ファミリー・プラクティス・ニュース

スピロノラクトンが拡張期心不全に有効性を示す

ファミリー・プラクティス・ニュース(2012年10月25日)― ミッチェルL.ゾラー(MITCHEL L. ZOLER)著、ファミリー・プラクティス・ニュース・デジタル・ネットワーク(Family Practice News Digital Network)

ミュンヘン ― 拡張期心不全患者に対するスピロノラクトン治療を評価した研究としては最大規模となる試験の結果から、明らかになったことがある。それは、この薬が構造的・血行力学的・生理学的に有益な効果を発揮し、その安全性はおおむね妥当ということであった。

だが、結果にはばらつきもあり、その他の評価項目では不可解な有効性の欠如が示された。そのため左室駆出率の保持された心不全患者へのスピロノラクトン使用については、懸念すべき悪影響の徴候も認められる場合、ほとんどの医師は来年さらに大規模な臨床試験の結果が利用できるようになるまでその判断を保留するだろう。

試験結果に基づき、「拡張期心不全の患者において、スピロノラクトンは心機能および血圧コントロールを改善すると考えられます」と、バーカートM.ピースク博士(Dr. Burkert M. Pieske)は欧州心臓病学会(European Society of Cardiology)年次大会で話した。

この『拡張期心不全におけるアルドステロン受容体遮断(Aldosterone Receptor Blockade in Diastolic Heart Failure : Aldo-DHF)』試験は、422例の患者をスピロノラクトン群またはプラセボ群に無作為に割り付け、検討を行ったものである。Aldo-DHF試験におけるスピロノラクトンの成果は、拡張期心不全領域での独自の地位をこの薬に与えている。つまり、スピロノラクトンは、現時点では前向き比較対照試験でポジティブな実績のようなものを持つ唯一の薬である。

「(試験でスピロノラクトンを服用した)患者らは、(1年間の治療終了後に)元気になったとは感じていないため、この薬の使用を一般に勧めることはできません」と、ピースク博士はインタビューで認めた。「それでも、2剤または3剤併用の降圧療法を受けているのに血圧が高いままの(拡張期心不全)患者を私が受け持つことになった場合、その患者の腎機能とカリウム値に問題がなければ、ためらうことなくスピロノラクトンを処方します。スピロノラクトン治療によって、血圧は下がり、心臓の構造と機能が改善するでしょう」オーストリア・グラーツ医科大学(Medical University of Graz)の心臓学部長で、教授でもあるピースク博士はそう話した。

一方、この結果を聞いた他の専門家らは疑問を持った。

「すべてが良いニュースというわけではありませんでした。患者はカリウム値が上昇していたし、もっと心配なことに、糸球体濾過量(GFR)が平均で約5 mL/分減少していました」シャリテ・ベルリン医科大学(Charite Medical University in Berlin)の内科学教授、ステファンD.アンケル博士(Dr. Stefan D. Anker)はそうコメントした。また、「(6分間歩行テストで歩いた距離は)スピロノラクトン群でわずかに減りました。15 mという小さな変化でしたが、統計的に有意な減少でした」と指摘した。さらに、「貧血の悪化も見られました」と述べた。

アンケル博士は、来年には出ると予想されるTOPCAT試験の結果を待つようアドバイスした。TOPCAT試験とは、米国で拡張期心不全の患者3,500例以上を対象にスピロノラクトンを検討する研究であり、国立心肺血液研究所(National Heart, Lung, and Blood Institute)の主催で行われている。

Aldo-DHF試験には、50歳以上で、ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association : NYHA)分類IIまたはIIIの心不全を認め、左室駆出率が50%以上の患者が登録された。また、患者は心エコーで拡張機能障害が確認され、最大酸素摂取量(VO2)が25 mL/kg/分未満であることも条件とした。血清カリウム値が5.1 mmol/L以上の患者、および推定糸球体濾過量(eGFR)が30 mL/分/1.73 m2未満または血清クレアチニンが1.8 mg/dL以上の患者については除外した。患者は平均67歳、約86%がII度の心不全、平均駆出率は約67%、平均GFRは約79 mL/分/1.73 m2であった。

研究者らは、患者213例をスピロノラクトン25 mg連日服用群に、209例をプラセボ対照群に無作為に割り付けた。患者らは他の薬物療法も受け、約4分の3がアンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体遮断薬、約4分の3がβ遮断薬、半数強が利尿薬を服用した。

試験には主要評価項目が2つあった。充満圧の代用指標であるE/e比について、12カ月後にスピロノラクトン群では平均0.6低下(ベースラインから5%低下)したのに対し、対照群では平均0.8上昇(ベースラインから6%上昇)し、群間に有意差が認められた。もう1つの主要評価項目は最大VO2の変化であり、この指標については両群とも試験の12カ月にわたってよく似た変化を示し、群間に有意差は認められなかった。

またスピロノラクトン群では、ベースライン時と比べて12カ月時点での血圧が平均8.2 mm Hgと有意に低下したが、E/eの変化に反映される心筋逆リモデリングに対しスピロノラクトンが与えた有益な影響は、この薬の降圧作用とは無関係に生じたと、ピースク博士は話した。

スピロノラクトン治療による有益な影響を示した副次評価項目の中には、その影響が小さいものもあったが、左室駆出率は有意に上昇し、また心不全の重症度を示すマーカーの脳性ナトリウム利尿ペプチドN末端プロホルモン(NT-proBNP)の血清中濃度も有意に低下した。ただし、スピロノラクトン群では6分間の歩行距離も平均で15 m減少し、これは有意な減少であった。

「私たちはスピロノラクトンの一貫した構造的・機能的リモデリング作用を目にしており、左室の大きさを除くその他すべての指標が改善されました。しかし、運動能力、NYHA分類、QOL(生活の質)については、効果が見られませんでした」と、ピースク博士は話した。「どういうわけか、心臓に与えた有益な影響は、状態の改善にはつながりませんでした。」

スピロノラクトン治療の安全性は全体的には良好であったものの、結果からは2、3の懸念事項となりうる点が示された。スピロノラクトン群では患者の36%で腎機能が悪化したのに対し、対照群では21%であり、その差は有意であった。さらに平均GFRがスピロノラクトン群では約7 mL/分/1.73 m2減少したのに対し、対照群では変化を認めなかった。貧血の新規発症または悪化した率は、スピロノラクトン群で16%、対照群で9%であり、有意差が認められた。その上、血清カリウム値が上昇した患者は、スピロノラクトン群のほうが対照群よりも2倍多かった。ただし、重度の高カリウム血症の発生率は両群とも低く、同程度であった。

「我々の知る限り、貧血の増加は(スピロノラクトン使用の)前には見られませんでした。」「おそらくは、貧血、つまりヘモグロビンの軽度減少が(運動能力に対する治療効果の欠如に)寄与したと考えられます」と、ピースク博士は示唆した。

Aldo-DHF試験は、ドイツ政府主催で行われた。ピースク博士は、自身と共同研究者には開示すべき情報はないと述べた。アンケル博士は、アムジェン社(Amgen)、ボッシュ・ヘルスケア社(Bosch Healthcare)などの企業からコンサルティング料を受け取っていると述べた。


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