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2013-04-30

ソース(記事原文):メッドスケープ

新しい乳がん治療薬の有効性は歓迎、価格は歓迎されず

メッドスケープ ― メッドスケープ・メディカル・ニュース(Medscape Medical News)が入手した専門家からのコメントによると、アメリカの臨床医らは、HER2陽性転移性乳がん患者のための治療選択肢に、新たに認可されたアドゥ‐トラスツズマブエムタンシンado-trastuzumab emtansine(カドサイラKadcyla、ロシュ/ジェネンテックRoche/Genentech)が追加されることで沸き立っている。

同時に、T-DM1として知られるこの薬が非常に高価であることに懸念や不満が生じている。

「私はT-DM1の承認をとても喜んでいる」と、ダナ・ファーバー癌研究所(Dana-Farber Cancer Institute)およびマサチューセッツ州ボストンのハーバード大学医学部(Harvard Medical School)のアン・パートリッジ(Ann Partridge)医師は電子メールで述べた。パートリッジ博士はこの新薬を「副作用が比較的限られた非常に有効な薬剤」と呼び、「転移性HER2陽性乳がん患者女性のための治療法が増えることになるだろう」と述べた。

先週の「ミラーのがんメッドスケープ(Miller on Oncology Medscap)」ブログで、インディアナポリスにあるインディアナ大学のキャシー・ミラー(Kathy Miller)医師は、米国食品医薬品局(FDA)の承認は乳がんにおける「極めて重大な」日だったと書いた。

ミラー医師は、ある程度の副作用と大きな効果の組み合わせを称して「これは、飲み応えは少ないが味は素晴らしいという、ライトビールによく見られる状況だ」と要約した。

「疾患のもっと早い段階でT-DM1を使用したいという大きな誘惑があるだろう」とミラー博士は電子メールで述べた。 しかし、この薬剤の使用を推奨できるようになるには、進行中である臨床試験の結果が必要だ、と彼女は付け加えた。

T-DM1は高価なので、アフリバーセプトaflibercept(ザルトラップZaltrap、リジェネロン/サノフィRegeneron/Sanofi)に対して起きたような反発があるだろうと推測される。ニューヨーク市のメモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)は10月、大腸癌の治療用の別の承認薬と比べて同様の効果があるのにはるかに高価なことから、アフリバーセプトを使用しないことを大々的に公言した。

「これらの薬はすべて非常に高価なので、一部の患者は、承認され使用可能になっても使うことが難しい」とパートリッジ博士。 博士は、HER2陽性転移性乳がんの治療薬としてFDAが承認した標的薬は4つともすべて高価だと付け加えた。

これらのHER2標的製品の最初の薬剤であるトラスツズマブ(ハーセプチンHerceptin 、ジェネンテック)は1998年に発売され、その後、ラパチニブlapatinib(タイケルブTykerb 、グラクソスミスクラインGlaxoSmithKline)、昨年のペルツズマブpertuzumab(パージェタPerjeta、ジェネンテック)、そして先週のT - DM1と続いた。

3つのジェネンテック製品については、時の経過とともに大きく値上がりした。 メディアの報道によると、トラスツズマブは月額約$ 4,500、ペルツズマブは月額約$ 60,00、T-DM1は月額約$ 9,800である。

ニューヨーク、ブロンクスの個人開業医であるスティーブン・ヴォーグル(Steven Vogl)医師は、この新薬の価格について困惑している。「T-DM1を使用するつもりだが、高価なことに怒りを感じている」と電子メールで述べた。

昨年クリニカル・オンコロジー・コム(ClinicalOncology.com)で発表したエッセイで、ヴォーグル博士はT-DM1の価格が高くなることを予測していた 。

製薬会社はおそらく「トラスツズマブに化学療法を併用した場合と比較して、T-DM1に対し法外な割増価格を請求してくるだろう」と彼は書いていた。 「医薬品の価格は、今や市場が負担可能だと推定される最高額に設定されているように見える」

価格について懸念はあるが、有効性はあるので、パートリッジ博士はT-DM1についてのコメントを抑えている。「価格は高いが、対象患者女性に効果があることをデータが明らかにしているので、さほど遺憾ではない」とパートリッジ博士。

しかし、ヴォーグル博士の意見では、データは明確ではなく問題がある。

ヴォーグル博士は、EMILIAとして知られるT-DM1の主要臨床試験に批判的であった。 この研究の対照レジメン(ラパチニブとカペシタビンcapecitabine)は、この設定でのFDAの承認を受けた治療選択肢であるにもかかわらず、「明らかに最適用量ではなく」、標準治療ではなかった、とヴォーグル博士。2つの試験グループの 5.8ヶ月の全生存期間の差は、この対照レジメンによって拡大した可能性がある、とヴォーグル博士は説明した。 博士は対照患者にもトラスツズマブを投与することを推奨している。トラスツズマブはラパチニブを補完するのに不可欠なものであると考えているからだ。

「T-DM1は、大きな進歩という目標を満たしていない」とヴォーグル博士は書いている。ヴォーグル博士の意見では、そのような進歩と言うには、患者を治癒し、臨床的完全寛解率を高めるか、非常に長期の高い部分寛解率をもたらさなければならないからだ、と説明した。

適応症外使用の可能性

T-DM1についてのニュースは、新しい治療選択肢に対する熱意や価格についての批判に限定されたものではない。 診療所でそれを使用する際の現実的な問題もある。

FDAの指示では、T-DM1を、トラスツズマブとタキサンの化学療法を受けた患者に憎悪が見られた後の、セカンドラインの治療薬だとしている。

しかし、 2009年に行われた最近の研究では 、トラスツズマブなどの標的薬を含む特許を取得した静脈内化学療法の総使用量の約3分の1は「適応症外使用」であった。

ヴォーグル博士は、トラスツズマブと化学療法との併用という現在の初期治療選択肢の前に、時々、T-DM1を承適応症外使用するつもりである。「私は[トラスツズマブよりも] T-DM1を使って、ドセタキセル(docetaxel)を併用するだろう」とヴォーグル博士。 しかし、ペルツズマブが意思決定のどこに当てはまるのかについては確信していないと述べた。ペルツズマブは、転移性疾患に対し過去に治療経験がないHER2陽性転移性乳がん患者において、トラスツズマブとドセタキセルとの併用で使用するよう指示されている。

「ペルツズマブですべてが複雑になっている。ペルツズマブプラスとT-DM1の併用の安全性と有効性に関するデータが必要だ」とヴォーグル博士。 さらに、保険会社がペルツズマブをてん補するのかという常に存在する疑問がある。「保険会社がペルツズマブをどのように扱っているのか分からない。保険会社はペルツズマブを初期治療に制限しているのではないかと思う。そうすればコストを削減でき、このコスト削減が通常保険会社の最大の関心事であるからだ」とヴォーグル博士は述べた。

上述したように、ミラー博士は疾患初期にT - DM1が果たす役割があるかもしれないことを示唆した。 適応外使用の「大きな誘惑」の源泉は、臨床試験の初期段階にある。「初期治療薬としてのドセタキセルとトラスツズマブとの併用より、T-DM1の有効性が大きくおよび毒性が少ないことを示唆している、非常に興味深い無作為化第Ⅱ相試験がある」とミラー博士は述べた。

しかし、ミラー博士は最終的には規制ラインに従った。「標準的な初期治療としての使用が推奨できるようになるまで、我々はMARIANNE試験の信頼できる第Ⅲ相データが必要だ」とミラー博士。 MARIANNE試験は、HER2陽性進行性乳がん患者、再発局所進行乳がん患者、または過去に治療経験のない転移性乳がん患者の3レジメンを比較している。つまり、T- DM1とプラスペルツズマブとの併用、T - DM1とペルツズマブとの併用、T-DM1とペルツズマブ‐プラセボとの併用(ペルツズマブに対しては盲目)、トラスツズマブとタキサンtaxane(ドセタキセルdocetaxelまたはパクリタキセルpaclitaxel)との併用である。

「私の同僚らと私は間違いなく、T-DM1を使用することになる」とパートリッジ博士。「[パクリタキセル]、[トラスツズマブ]、ペルツズマブなどの別のレジメンによる初期治療後の可能性が高い」と述べた。

パートリッジ博士とヴォーグル博士は関連する金銭的関係がないことを開示している。ミラー博士はジェネンテック、ブリストル・マイヤーズ スクイブ、アストラゼネカ(AstraZeneca)、ロシュ、クロービス・オンコロジー(Clovis Oncology)との金銭的な関係を報告している。


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