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2014-07-22

ソース(記事原文):PHYS.ORG

ナトリウム特異的イオンチャネルの機能を光で調整することを可能にした光感受性タイプのアミロライド

PHYS.ORG(2014年7月22日) ― 利尿薬アミロライドは高血圧の治療薬として用いられている。ミュンヘンのルートヴィヒ・マクシミリアン大学(Ludwig Maximilian University:LMU)研究者らは今回、アミロライドに光感受性物質を合成することで、ナトリウム特異的イオンチャネルの機能を光で調整できるようにした。

利尿薬とは、尿量を増加させる薬剤のことで、高血圧や心不全の治療に用いられるものである。アミロライドは、カリウム保持性利尿薬として最もよく知られる薬剤の一つであり、多様な生理機能を有する上皮性ナトリウムチャネル(ENaCs)の作用を遮断する働きをする。上皮性ナトリウムチャネルとは、細胞膜内にイオン通過路を形成するヘテロ三量体タンパク質のことで、ナトリウムイオン(Na+)の通過を可能にするものである。腎臓内のアルファ/ベータ/ガンマの3つのサブタイプは、尿からナトリウムを吸収することに関与しており、水分損失を抑制し、血液量を維持する。また、上皮性ナトリウムチャネルは非上皮組織(例えば、神経細胞)内に存在が認められるが、その機能についてはまだ十分に解明されていない。ギーセンにあるリービッヒ大学(Justus Liebig University)の研究者らと共同して、LMU大学の化学生物学・遺伝学部門教授のダーク・トローネ(Dirk Trauner)氏を中心とするチームが、アミロライドの構造を改変し、アミロライドの持つ上皮性ナトリウムチャネルを遮断する作用を、光でコントロールできるようにした。これはアミロライド感受性イオンチャネルの初の光学的ツールである。

本論文の主著者であるマサイアス ・ショーエンバーガー(Matthias Schonberger)博士は「この新規Photoamiloride(正式な日本語名はないので以下フォトアミロライド)は、光学的なシグナルを用いて、上皮性ナトリウムチャネルの活動を我々の手でコントロールできるようにするものである」としている。結果は英科学誌「ネイチャー・ケミストリー(Nature Chemistry)」に掲載された。青色光を当てると、フォトアミロライドが活性化し、それが上皮性ナトリウムチャネルの遮断につながる。青色光を消して、緑色光を細胞に照射すると、フォトアミロライドの形が変わり、遮断は解除され、チャネルポア(イオンの通り道の孔)を通じてナトリウムイオンが細胞内に流入する。この手法により、チャネルの開閉が自由にできるようになる。

サブタイプの選択性

この新規フォトアミロライドが上皮性ナトリウムチャネルに対して前述のように機能することを、両生類の細胞及びヒト胚性腎臓細胞、それにヒト肺上皮の組織培養モデルにおいて、本研究者らが明らかにした。こうした実験から、フォトアミロライドが、上皮性ナトリウムチャネルのうちデルタ/ベータ/ガンマのサブタイプと最も効果的に相互作用することも示された。上皮性ナトリウムチャネルのサブタイプに選択的に働きかける薬剤はこれまで存在せず、その機能もほとんど解明されていないので、今回の結果は素晴らしいと言える。ショーエンバーガー氏は「これで、このチャネルアイソフォームを調査できるツールがいつでも手の届く所にあるということになる」と補足している。

上皮性ナトリウムチャネルを経由したナトリウムイオンの異常な流入は、神経細胞による制御不能な持続性発火に起因する神経系疾患を起こす発生機序の一因となり得るという考察が多くみられる。「現段階で仮説に過ぎないが、その主な理由としてデルタ上皮性ナトリウムチャネルが霊長類でしか認められないことが挙げられる。このことが、特に脳で、その機能を研究する妨げとなっていた。したがって、主にこの種のイオンチャネルに作用する薬理学的ツールが手元にあるというのは非常に頼もしい」とショーエンバーガー氏は説明している。

このように、新規フォトアミロライドは、上皮性ナトリウムチャネルを光でコントロールすることを可能にするだけでなく、上皮性ナトリウムチャネルの異なるサブタイプの分析も可能にする。それにより異なる組織内のイオンチャネルの役割を深く理解することにつながると考えられる。それだけに留まらない。ダーク・トローネ氏は「さらに、フォトアミロライド/上皮性ナトリウムチャネルシステムは、これらのチャネルを通るナトリウムイオンの流れを変えることにより、細胞の分極状態(細胞膜を通る電位の大きさ)を操作することにも使用できる」とDirk Traunerは補足している。「このアプローチに基づくと、電位感受性イオンチャネルに対する光学的スクリーニングの構築基盤を開発できるのではないかと考えられる。さらに、この新規フォトアミロライドは、分極に基づく細胞間情報伝達系がどのように働くのか研究する上で新たな方法を提示している」


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