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2014-02-03

ソース(記事原文):ヘルス・ニュース・ダイジェスト

基底細胞がんの治療に抗真菌薬イトラコナゾール

ヘルス・ニュース・ダイジェスト(2014年2月3日) ― ランジニ・ラグナス(Ranjini Raghunath)著

2月3日の『ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー(Journal of Clinical Oncology)』オンライン版に発表された研究によると、皮膚がんの中で最も多い基底細胞がんには、イトラコナゾール治療が有用かもしれません。イトラコナゾールは一般的な抗真菌薬です。がん治療の新薬を一から開発するには、研究に長い歳月をかけ、多額の資金をつぎ込むことになります。でも、すでに近くの薬局にあって、ボトルにしまい込まれている経口薬が「次なる治療」になるとしたら…?

この研究では多発性基底細胞がんの患者の治療にイトラコナゾールを使用して、その有効性を調べました。スタンフォード大学医学部(Stanford University School of Medicine)の研究者らが実施した第II相臨床試験は、被験者が29人で腫瘍の数は計101というものです。試験の結果、1カ月以内にほとんどの患者で腫瘍の大きさと広がりが縮小したことが分かりました。

米国では毎年、3百万人近くが基底細胞がんになります。主に日差しの浴び過ぎが引き金となって起こり、命に関わることはめったにないのですが、進行すると痛む場合や見た目を損なうことがあります。特にリスクが高いのは肌の色が薄い高齢者です。

発表された研究論文は、イトラコナゾールが基底細胞がんの治療に有用なことを初めて証明しています。論文の上席著者で皮膚科学准教授のジーン・タン博士(Jean Tang, MD, PhD)によれば、どうやって既存薬を本来の目的とは違うがん治療に利用できるようにしたかも示しているそうです。筆頭著者は、ダニエル・キム(Daniel Kim)というスタンフォード大学の学生です。

「新薬の開発にはおよそ8億ドルが必要で、期間も平均10年はかかります」とタン博士。「私たちは、25年前から出回り多くの人に使われてきた薬を利用することで、開発プロセスを短縮しているのです」。

イトラコナゾールは一般的な真菌感染症に処方される薬で、細胞膜に不可欠な構成成分が作られるのをブロックすることで真菌を殺します。イトラコナゾールをがん細胞に使用すると、ヘッジホッグシグナル伝達経路の働きを抑えるようです。この経路は、ヘッジホッグというタンパク質のシグナルをきっかけに細胞で起こる一連の事象のことで、細胞増殖や発生に欠かすことができません。

最初に確認されたヘッジホッグ経路の働きは、ショウジョウバエの体が分節化するのを制御する役割でした。ハエの胚を使って、この経路の重要タンパク質を作るメッセンジャーを欠損させたところ、胚はまるでハリネズミのようになったのです。ヘッジホッグ経路のタンパク質が重要シグナルをリレーのように伝えることで、細胞は増殖・分裂して胚や腫瘍になります。成人の正常な細胞では、組織の維持や修復のほとんどにヘッジホッグ経路が関与しています。また、幹細胞から様々なタイプの細胞ができるのを調節する役割も果たします。

研究者たちは以前、マウスのヘッジホッグタンパク質を異常に活性化させたり、欠損させたりすると、がんの発症や重要器官の奇形が起こることを示しました。

今回の研究のために、タン博士が共著者としてチームに迎えたのはフィリップ・ビーチー博士(Philip Beachy, PhD)です。ビーチー博士は生化学・発生生物学教授で、長年にわたりヘッジホッグシグナル伝達経路を研究しています。

1998年にビーチー研究室が初めて、シクロパミンという植物由来の化合物がヘッジホッグ経路を阻害することや、その代替となる複数の化学物質を確認しました。しかし博士らは、この経路を標的にした医薬品を一から開発すれば、うんざりするほど長くて資金面でも危うい道のりになることを知っていました。

4年前、ビーチー博士が当時ポスドクだったジェームズ・キム博士(James Kim, MD, PhD)と一緒に発表した研究があります。その研究は、米食品医薬品局(Food and Drug Administration : FDA)にすでに承認されている、つまり臨床試験が済んでいて、ヘッジホッグ経路を阻害できる薬を特定するというものでした。キム博士は、今回の研究でも共著者です。

スタンフォード大学の『アーネスト・アンド・アメリア・ガロ・プロフェッサー(Ernest and Amelia Gallo Professor)』でもあるビーチー博士は、「すでに販売されている薬で有望なものがあれば、それを利用できるようにしたほうがよっぽど簡単だということに気付きました」と言います。

彼らが2400種の薬を選別したところ、有望なものがいくつかありました。けれども、真菌感染症に処方するときの通常用量でヘッジホッグ経路を阻害できるという理由から、イトラコナゾールが最も有望でした。マウスにイトラコナゾールを投与すると、腫瘍は大幅に縮小しました。

そこでタン博士が第一弾となる臨床試験を実施し、今回の新しい論文に結果が報告されています。患者群の一方は1カ月間、イトラコナゾール錠を1日2回服用しました。他方の群はもう少し長い期間(平均10週)、より低用量でこの薬を服用しました。

前者の患者群では、イトラコナゾールがヘッジホッグ経路の活性を平均65%抑制して、腫瘍の大きさを24%縮小させました。低用量で服用した後者の群でも、腫瘍の大きさが同じように縮小しました。

「次のステップは、もっと長い期間、もっと多くの患者でイトラコナゾールの試験を行い、他の治療との比較で抗腫瘍効果を実際に評価することです」とタン博士は言います。イトラコナゾール(商品名スポラノックス)の副作用はたいていが軽度で、悪心、疲労感、めまいなどがあります。まれですが、肝機能障害が起こることもあります。うっ血性心不全や心疾患の既往がある人は、イトラコナゾールを服用しないほうがいいでしょう。

タン博士は以前にも、ビスモデギブの臨床試験に力を注いだことがあります。ヘッジホッグ経路を遮断するように作られたビスモデギブは、初の基底細胞がん治療薬としてFDAに承認されました。この薬は非常に強力なことが分かったため、現在では進行した基底細胞がんの第一選択療法と考えられています。しかしビスモデギブの発見と開発には何年もかかっており、患者の負担額も1年間の処方でおよそ9万ドル、1日あたり約250ドルです。

進行した腫瘍に対するイトラコナゾールの効果はビスモデギブほどではないようですが、比較的小さい腫瘍の治療には有望であり、価格もはるかに低くて1日20ドルほどで済みます。

「イトラコナゾールの特徴で興味深いのは、ヘッジホッグ経路を阻害するビスモデギブなどのがん治療薬に耐性を示すようになったがん細胞を抑制できるということです」とビーチー博士。「代替の治療薬として、あるいは他の治療選択肢と併用のほうがうまくいくかもしれません」。

タン博士は現在、ビスモデギブ治療で十分な効果が得られない患者を対象に、イトラコナゾールと三酸化ヒ素の併用療法を調べる臨床試験を行っています。

この研究論文の共著者で、スタンフォード大学に所属しているのはタン博士らのほかに元医学生のカトリーナ・スポーンハーストMD(Katrina Spaunhurst, MD)、皮膚科レジデントのテレサ・フーMD(Teresa Fu, MD)、元皮膚科レジデントのリタ・ホドシュMD, PhD(Rita Khodosh, MD, PhD)とカリヤニ・チャンドラMD(Kalyani Chandra, MD)です。

この研究は、「スタンフォード大学『SPARK』プログラム」、「スタンフォード大学『クリニカル・アンド・トランスレーショナル・サイエンス・アワード(Clinical and Translational Science Award)』を管理する『Spectrum』(助成No. UL1TR000093)」、「デイモン・ラニヨン・クリニカル・インベスティゲーター・アワード(Damon Runyon Clinical Investigator Award)」の支援を受けました。

同じく研究を支援したスタンフォード大学皮膚科については、こちら(http://dermatology.stanford.edu)をご覧ください。


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