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2010-09-29

ソース(記事原文):サイエンスデイリー

子宮内膜がんの治療に子宮内避妊用具が利用可

サイエンスデイリー(ScienceDaily:オンライン科学雑誌)(2010年9月29日)─ がん専門誌・アナルズ・オブ・オンコロジー(Annals of Oncology)のオンライン版に掲載された新しい研究によると、避妊用に開発された子宮内用具を使って子宮内膜がんを治療し、治すことさえできるという。子宮の内側の膜にがんが発生する子宮内膜がんに罹患した若い女性が子宮摘出をせずに治療を受ける道を開く発見だ。これにより、欲しいだけ子供を産むまでの間、生殖能力を保つことができる。

子宮内膜がんは、女性が罹る癌のうち世界で6番目に頻度の高いものである。2008年に世界で約287,630例の子宮内膜がんが診断された。女性の癌の4.8%を占め、74,170名が死亡した(がんによる女性の死亡例全体の2.2%にあたる)[1]。通常の治療は子宮と両側の卵巣の除去からなる子宮全摘出術である。しかし結果的に女性は生殖能力を失ってしまう。がんの成長を遅らせるために経口ホルモン療法を行うこともあるが、ホルモン薬の全身投与はアレルギー性皮疹、悪心嘔吐、頭痛、不正出血などの有害な副作用を起こす恐れがある。

イタリアの研究チームが臨床試験を実施した。プロゲスチンホルモン・レボノルゲストレル[2]を放出する子宮内用具(IUD)の留置し、これに性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の月に1度、6か月間の注射を加えることで、40歳以下の女性の子宮内膜がんの成長を止め、縮小させられるかどうか確認するための初めての前向き試験である。子宮内用具から放出されるレボノルゲストレルが子宮内膜層の成長を阻害する一方、GnRHはエストロゲンの産生を抑制する。エストロゲンは子宮内膜がんの成長を促進するホルモンである。

被験者として、内膜異型増殖症(AEH) ― 子宮内膜がんの前がん病変 ― 、または早期子宮内膜がんの患者だけを選択した。早期がんとは、がんが拡がっておらず子宮の内側の層、すなわち子宮内膜に限局しているものを言う。1996年から2009年の間に、ミラノ(Milan)の欧州がん研究所(European Institute of Oncology)で治療を受けた20歳から40歳の39名の患者のうち、データの分析が可能だった34名が被験者となった。

IUDを1年間留置し、その後、がんの成長が止まっていた場合や再発していなかった場合に限って、これを除去した。これにより女性は妊娠計画を立てることができる。IUDを除去したあと、がんが再発していないか確認するために医師が患者を6か月ごとに継続管理した。女性が望むだけの数の子供を出産した時点で、がんの再燃を長期的に、確実に防ぐために子宮を摘出した。がんと診断されたときに非常に若かった患者で、IUD治療の数年後に妊娠に成功した例もある。

AEH患者 20例のうち19例(95%)が治療当初、完全寛解した。しかしこのうち4例は後で再発し再治療しなければいけなかった。早期子宮内膜がん患者14例で完全寛解したのは8例(57.1%)、がんが進行したのは4例(28%)だった。当初完全寛解した患者のうち2例にがんが再発した。勢いを盛り返したり再発したりしたがんに対してはIUD+GnRH治療を継続するか、必要なら子宮を摘出して治療した。全被験者が生存しており、がんの所見もない。9名が11回自然妊娠し、子供9名が生まれている。

この試験の論文執筆者の1人、ルーカス・ミニグ博士(Lucas Minig)はこう述べた。「錠剤の形で内服した場合に想定される量と比べ、IUDを使うと非常に高い用量のホルモン・レボノルゲストレルを子宮内膜表面に届けることができます。血清中のホルモン濃度は低いままですから、薬剤を全身投与するときに起こるさまざまな副作用を避けられるのです。」

IUDは避妊用具であるだけでなく、レボノルゲストレルIUDは医師が子宮内膜症と機能性出血を治療する際の第一選択となっている。本試験が示しているのは、特定の型の子宮内膜がんを治療するのにもIUDを使えるということである。

「今回達成した奏効率は、子宮内膜がんに対する他の保存療法と同程度でした」とミニグ博士は言う。博士は現在、スペイン・マドリード(Madrid, Spain)のマドリードサンチナーロ大学病院(Hospital Universitario Madrid Sanchinarro)の婦人科腫瘍学部門に所属している。米国メリーランド州ベセスダ(Bethesda, MD, USA)にある米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)の、国立がん研究所(National Cancer Institute)臨床研究奨励金プログラム(clinical research fellowship programme)に移る前に、欧州がん研究所の婦人科腫瘍学特別研究員であった時に本試験を実施した。「すぐ子供が欲しいわけではないかもしれませんが、将来機会を見つけて妊娠・出産したいと考えている若い患者さんに、ノルゲストレル放出IUDを使った治療は最適だと思います。」

適用する患者を慎重に選び、腹腔鏡検査や超音波検査、MRIで状態を評価してさえいれば、レボノルゲストレル放出IUDでAEHと早期子宮内膜がんを治療できるようになった、と博士は言う。検査が必要なのは、がんが拡がっておらず、子宮内膜がん患者によく見られる随伴性卵巣がんがないことを確認するためである。さらに、患者はがん専門医療センターで治療を受け、診断が正しいかどうかを複数の病理学者が確認するのが理想的である。そして出産後も追跡調査をきちんと受けるのがよい。

「本試験の結果は多施設共同の、国際的な試験の開始を後押しするものです。妊娠を望んでいる子宮内膜がん患者に対する最善の治療法を明らかにするためのです。治療する上で、どの選択肢が有効性と副作用の点で優れているかを知る必要があります」博士はこう述べた。

「この結果は新しい研究領域を開くものでもあります。薬剤(この場合はプロゲステロン)を直接、器官(この場合は子宮)に届ける可能性の研究です。例えば子宮疾患に関しては、IUDを使って化学療法を行ったり、他の活性薬を直接子宮に届けたりして早期子宮内膜がんを治療し、手術せずに済ませられるかもしれません。閉経後の女性も含めてです」