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2010-03-26

ソース(記事原文):サイエンスデイリー

関節リウマチの新しい治療法となるか。

サイエンスデイリー(2010年3月26日)
NYUランゴ―ンメディカルセンターの研究員が斬新な関節リウマチやその他の自己免疫疾患の治療方法を発見か:抗炎症作用を持つ免疫細胞活動を活性化させると炎症が抑えられる可能性がある。2010年3月25日刊行のインターネット版サイエンスでは、抗炎症作用を持つ免疫細胞が現在研究中の医薬品により活性化されると、それがどのようにして特定の酵素を阻害し、その結果炎症を抑えることに繋がるのかということが研究者により明らかにされている。

「この珍しい作用機序は、将来の関節リウマチなどの自己免疫疾患やクローン病などの炎症性疾患の有望な治療方法を示す道しるべとなりうる。」とThe Irene Diamondの免疫学部教授兼NYUランゴ―ンメディカルセンター病理学部教授であるマイケル・ダスティン博士は述べている。

この新しい研究はダスティン博士の研究所にて博士研究員を務めるアレクサンドラ・ザニンゾロフ博士と病理学部及び医学部准教授であるジュリアン・ラファイル博士及び医学部教授兼病理学部教授兼リウマチ学部理事を務めるスティーブン・アブラムソン医学博士が中心となりなされたものである。研究費用は、その大部分が“国立衛生研究所医療研究のためのロードマップのナノ医療開発センタープログラム”の下に5年間国立衛生研究所により賄われた。

関節を破壊する関節リウマチは、通常のT細胞の過剰活動に起因する自己免疫疾患であると一般的には考えられている。このT細胞には炎症を鎮める働きや、癌細胞や他の疾患の病巣部分を攻撃する働きがある。過去数年間の研究で、免疫システムの別の細胞である制御性T細胞に通常のT細胞の活動を抑制する働きがあり、そして通常のT細胞の活動が抑制されると患部の炎症が鎮まることがNYUや他の研究所の研究者らによって発見された。

制御性T細胞は、他の細胞との情報伝達により通常のT細胞の活動を抑制する。分子を見分ける作業と高性能顕微鏡を用いて観察した結果、プロテインキナーゼθと呼ばれる酵素の制御性T細胞内での活動が制限されていることが確認された。この制御性T細胞活動が最も活発になった際に、細胞間情報伝達が行われる個所から炎症の原因となる他の細胞が遠くに追いやられる事が判明した。「この酵素の細胞内分布は非常に珍しい」とダスティン博士は語る。「通常のT細胞内では、この酵素は細胞間情報伝達が行われる個所へ移動するのだが、制御性T細胞内ではこの酵素がその個所から遠く追いやられている」。

この結果を受けて、ベーリンガーインゲルハイム製薬株式会社により開発されたコンパウンド20等のキナーゼ酵素阻害剤の試験が開始された。驚く事にこのコンパウンドは制御性T細胞の通常活動を5倍近くまで高めたのである。キナーゼ酵素が阻害されると制御性T細胞が持つ作用が高まり、それがキナーゼ酵素を情報伝達が行われる個所から遠ざけることに繋がることが研究者達により明らかにされた。つまり、このコンパウンドは制御性T細胞の抗炎症作用を高めたのである。

 

関節炎リウマチにおけるT細胞の陰と陽
関節炎リウマチは、異常な量の抗感染作用を持つT細胞が関節部に流れ込むことにより、又は抗炎症作用のあるT細胞にそれが短時間さらされることにより、若しくはその両方が自己免疫システムによる関節への攻撃となり引き起こされる。「であるからして、制御性T細胞活動が抑制されている状態やその活動に異常がある状態にある場合は、自己免疫疾患を患う可能性が高くなる」とアブラムソン博士は言う。

症状の程度が異なる25人の関節リウマチ患者の血液が採取・分析され、過去に行われた制御性T細胞と関節リウマチの関連性に関する研究結果の裏付けがとられた。「この血液検査結果により判明した最も重要な事は、関節リウマチ患者の血液中の制御性T細胞活動が異常に低いということと、症状が重い人ほど制御性T細胞活動が低くなるということである」とアブラムソン博士は言う。

キナーゼ酵素阻害薬を混ぜた組織培養液に活動性の低い制御性T細胞を入れたところ、その制御性T細胞は通常の状態に回復した。「低下した制御性T細胞活動レベルを健康な人と同じ位の値まで戻すことに成功した」とダスティン博士は述べている。

この研究では、胃腸内の炎症に象徴されるクローン病を患ったマウスにもコンパウンド20が投与された。先ず、研究者は活動が低下した制御性T細胞をキナーゼ酵素阻害薬を用いてその活動性を回復させた。その後、その制御性T細胞をマウスに注射したところ、制御性T細胞の抗炎症作用が高まった。マウスの体内の抗炎症性の制御性T細胞と炎症促進性物質の割合が1対4と制御性T細胞は数で劣ったにも関わらず、炎症は抑えられたのである。

「この制御性T細胞の抗炎症作用に関わる理論は次の通りである。制御性T細胞の活動性を回復させるということは、その抗炎症作用を回復させるということを意味する。その抗炎症作用が、異常な免疫活動により関節が破壊されるのを防ぐのである」とアブラムソン博士は解説している。

この研究にはアレクサンドラ・ザニンゾロフ博士とジュリアン・ラファイル博士そしてスティーブン・アブラムソン医学博士の他に、NYUランゴ―ンメディカルセンターからイ・ディンとスダ・クマリ、そしてムクダン・アタ―が、ミネソタ大学からはケリ・L・ヒッペンとブルースR・ブレイザーが、更にベーリンガーインゲルハイム製薬株式会社からマリアン・ブラウンが参加した。

この研究は国立衛生研究所による経済援助の他に、白血病とリンパ腫のトランスレーショナルリサーチプログラム並びに大阪大学免疫学フロンティア研究センターからも支援を受けた。ダスティン博士とザニンゾロフ博士の両名は、プロテインキナーゼに対しコンパウンド20とRNAiを使用する方法に関し、既に特許を出願済みである。